V2Hの全負荷型と特定負荷型の違いを徹底解説︎
停電時に使える範囲・選び方・費用
V2H(Vehicle to Home)を検討していると、必ず出てくるのが「全負荷型」と「特定負荷型」という2つのタイプです。これは停電したときに、家の中のどこまで電気を使えるかを左右する重要な違いで、選び方を間違えると「いざという時にキッチンや2階が使えなかった」という後悔につながりかねません。
この記事では、全負荷型と特定負荷型の仕組みの違い、それぞれのメリット・デメリット、費用と補助金の目安、そして「あなたの家にはどちらが向いているか」を、電池バンクの実際の施工事例を交えながら分かりやすく解説します。V2Hそのものの基礎から知りたい方は、あわせてV2Hとは?の解説記事もご覧ください。
V2Hの「全負荷型」「特定負荷型」とは?基本の違い
V2Hは、EV(電気自動車)やPHEVに蓄えた電気を家庭で使えるようにする機器です。停電が起きると、V2Hは電力会社の系統から切り離され、EVの電気を家に流す「自立運転」に切り替わります。このとき家のどの範囲(回路)に電気を届けるかによって、全負荷型と特定負荷型に分かれます。
全負荷型は、分電盤の主幹(家全体)に接続し、停電時も家じゅうのコンセントや照明、エアコン、IHクッキングヒーターなどを普段どおり使えるタイプです。一方特定負荷型は、あらかじめ選んでおいた特定の回路(たとえばリビングの照明・冷蔵庫・スマホ充電用コンセントなど)だけに電気を供給します。普段の充放電(夜間にEVから家へ給電して電気代を下げる、太陽光の余剰でEVを充電する等)は、どちらのタイプでも家全体を対象に行えます。違いが出るのは、あくまで停電時の給電範囲です。
停電時に使える範囲はこう変わる|全負荷 vs 特定負荷
停電時の使い勝手をイメージすると、両者の差は次のようになります。全負荷型は「停電していることを忘れるくらい普段どおり」、特定負荷型は「必要最低限の電気を確保して生活をしのぐ」という位置づけです。
- 全負荷型:家じゅうのコンセント・照明が使える。エアコン、IH、エコキュート、200V機器まで(EV残量と機器容量の範囲で)稼働できる
- 特定負荷型:事前に指定した回路のみ使用可能。冷蔵庫・一部照明・スマホ充電など生活の要は確保できるが、指定外のエアコンや2階は使えないことがある
- 全負荷型は200V機器(IH・エアコン・エコキュート等)に対応する機種が中心。特定負荷型は100V回路中心のことが多い
- どちらも普段の節電・自家消費(EVから家への給電、太陽光でのEV充電)は家全体で利用できる
ここがポイント
「全負荷型なら停電時に何でも使い放題」ではありません。使える電力の総量はEVの残量とV2Hの出力(一般に定格5.9kW前後)に左右されます。エアコンとIHと電子レンジを同時に全開で使えば、EVの電気はその分早く減ります。全負荷型でも“使う量の管理”は必要だと覚えておきましょう。停電・防災の備え方はV2Hで備える停電・防災対策の記事で詳しく解説しています。
全負荷型のメリット・デメリット
最大のメリットは、停電時でも生活の質をほとんど落とさずに済むことです。夏場の熱中症対策としてエアコンを止めずに使えたり、IHで普段どおり調理できたり、在宅ワークで家じゅうのどのコンセントも使えたりと、災害時の安心感は特定負荷型を大きく上回ります。オール電化住宅や、小さなお子さま・高齢のご家族がいるご家庭では、この安心感が決め手になることが多いです。オール電化との相性はオール電化住宅にV2Hは必要?の記事もあわせてご覧ください。
デメリットは、機器価格が特定負荷型よりやや高く(目安で数万〜十数万円差)、設置条件も厳しめな点です。家全体をまかなうため、分電盤の主幹容量やEVの容量に一定の余裕が求められます。また対応機種が限られる場合があるため、希望のメーカー・車種と両立できるかの事前確認が欠かせません。
特定負荷型のメリット・デメリット
メリットは、価格を抑えやすく、設置のハードルが低いことです。停電時に守りたい家電(冷蔵庫・照明・通信機器など)を確実に確保できれば十分、という考え方にはよくフィットします。普段の電気代削減(夜間にEVから給電、昼間に太陽光でEV充電)は全負荷型と同じように行えるため、「経済性はしっかり取りつつ、停電対策は最低限でよい」という方にはコストパフォーマンスに優れます。普段の節約効果はV2Hで電気代はどれだけ安くなるかの記事が参考になります。
デメリットは、停電時に使えるのが指定回路だけに限られることです。とくに200Vのエアコンやエコキュートが対象外だと、真夏・真冬の停電で不便を感じやすくなります。また、後から「やっぱり家全体で使いたい」と思っても、全負荷型への変更は分電盤工事を伴い簡単ではありません。導入前の見極めが重要で、後悔しない選び方の記事もご一読をおすすめします。
あなたに向いているのはどっち?タイプ別の選び方
- 全負荷型が向いている人:オール電化住宅、停電時もエアコン・IHを使いたい、災害の備えを最重視、EVの容量が大きい(40kWh以上目安)
- 特定負荷型が向いている人:導入コストを抑えたい、停電時は冷蔵庫・照明・通信が確保できれば十分、ガス併用でIH以外の調理手段がある
- どちらでも良い人:主目的が電気代削減や太陽光の自家消費で、停電対策は副次的という場合は、価格と対応機種で決めても問題ない
迷ったら「この夏(または冬)に丸一日停電したら、我が家は何がないと困るか」を家族で書き出してみてください。エアコンやIHが必須なら全負荷型、冷蔵庫と明かりがあればしのげるなら特定負荷型、と切り分けやすくなります。対応車種の条件はV2H対応車種ガイドで確認できます。
費用と補助金の目安(2026年度)
V2H本体と設置工事を合わせた費用は、機種や住宅条件によって幅がありますが、おおむね本体50万〜100万円前後+工事費が目安です。全負荷型は特定負荷型より数万〜十数万円ほど高くなる傾向があります。詳しい内訳はV2H設置費用の完全ガイドで解説しています。
2026年度も、経済産業省による「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てん設備等導入促進補助金」(いわゆるCEV補助金)が用意されています。個人宅の場合、V2H充放電設備で機器費最大75万円+工事費最大55万円(合計最大130万円)が上限の枠組みで、申請・交付は一般社団法人次世代自動車振興センター(NeV)が担います。これに加えて自治体独自の補助金を併用できるケースもあり、東京都などでは太陽光の既設やEVの新規購入を条件に上乗せされる仕組みがあります。補助金は毎年内容が変わり、公募期間も短いため、最新情報はV2H補助金の解説記事で必ずご確認ください。
補助金は「負荷タイプ」で差がつくわけではない
補助金の額は基本的に対象機器と工事内容で決まり、「全負荷型だから多い/特定負荷型だから少ない」というものではありません。ただし、対応機器や設置構成によって受給できる枠が変わることはあります。電池バンクでは補助金の申請を無償で代行しているので、負荷タイプと補助金の両面から最適な組み合わせをご提案できます。
全負荷型を選ぶときの注意点(主幹容量・EV残量)
全負荷型を検討する際は、以下の点を事前にチェックしておくと安心です。とくに分電盤の主幹ブレーカー容量や設置スペースは、住宅ごとに条件が異なります。設置の可否や必要工事はV2Hの設置条件の記事で詳しく確認できます。
第一に、停電時の使用量はEV残量に依存する点です。全負荷でも、残量が少なければ使える時間は短くなります。日頃からEVをある程度充電しておく運用が、いざという時の備えになります。第二に、V2Hの定格出力(一般に5.9kW前後)を超える同時使用はできないこと。エアコン複数台とIHと電子レンジをフル稼働、といった使い方は避け、優先順位をつけて使うのが現実的です。第三に、設置スペースと配線ルート。全負荷型は分電盤の主幹に接続するため、分電盤とV2Hの位置関係によって工事内容が変わります。
電池バンクのV2H施工事例
ここからは、電池バンクが実際に手がけた施工事例の中から、負荷タイプ選びの参考になる3件をご紹介します。いずれも実在の事例で、機種・価格帯・補助金額は当時の実績値です。このほかの事例はV2H導入事例9選の記事にまとめています。
事例①:特定負荷から「全負荷対応」へ進化(千葉県松戸市A様邸/ニチコン トライブリッド T3)
新築時から太陽光を活用されていたお客様が、EV導入を機に既存の太陽光へV2Hを後付けされた事例です。採用機種はニチコンのトライブリッド蓄電システムT3(型式ES-T3PL1、機器保証15年・自然災害補償10年)。既設の太陽光パワコンをニチコンのトライブリッドパワコンへ一新し、駐車スペースの形状に合わせてセパレート型スタンドを設置しました。注目したいのは停電時の変化で、導入前は自立コンセント(特定負荷)のみだった給電範囲が、導入後は家全体へ給電できる「全負荷対応」へと進化しています。まさに、本記事のテーマである特定負荷と全負荷の違いを体感できる事例です。
事例②:壁掛け全負荷対応でエネファームも継続(神奈川県横浜市I様邸/オムロン)
すでに太陽光発電とエネファームを運用中のご自宅へ、壁掛けタイプのV2Hを追加された事例です。エネファームと干渉せず併設でき、かつ停電時にもエネファームの発電を止めずに使える専用モデルとして、オムロンのマルチV2Xシステム(型式KPEP-A-SET-4AC-AF)を選定。設置方式は壁掛けで、全負荷対応です。価格帯は120〜150万円、補助金は約65万円を活用されました。太陽光・エネファーム・EVの3系統を適切に制御し、夜間の電気代削減と停電時の備えを両立しています。
事例③:補助金の上乗せを活用して総額140万円受給(東京都町田市S様邸/オムロン)
既設の太陽光+蓄電池(オムロン マルチ蓄電プラットフォーム)へ、同メーカーのV2X(型式KPEP-A-SET-4AC-EF)を増設された事例です。同一メーカーで統一することで、太陽光・蓄電池・EVの電気を1つのシステムで効率よく制御でき、停電時の動作保証の面でも有利になります。価格帯は140〜160万円。国と東京都の補助金を併用し、総額140万円の補助金を受給されました。太陽光の既設やEVの保有といった条件を満たすことで補助上限が引き上げられる「上乗せ」の仕組みを、スケジュール調整で最大限に活かした好例です。
よくある質問(FAQ)
Q. 特定負荷型を後から全負荷型に変更できますか?
A. 機器自体の交換や分電盤の工事が必要になるため、簡単ではありません。将来家全体で使いたい可能性があるなら、最初から全負荷型を検討するのが無難です。
Q. 全負荷型なら停電時にどれだけでも電気を使えますか?
A. いいえ。使える電力量はEVの残量、使える同時電力はV2Hの定格出力(一般に5.9kW前後)が上限です。全負荷でも使いすぎればEVの電気は早く減ります。
Q. 太陽光がなくても全負荷型のメリットはありますか?
A. あります。停電時に家全体を使える安心感は太陽光の有無に関係しません。ただし太陽光があれば日中にEVを充電でき、停電が長引いても電気を継ぎ足せます。詳しくは太陽光なしでもV2Hは意味あるかの記事をご覧ください。
そのほかの疑問はV2Hよくある質問の記事にまとめています。
まとめ
全負荷型と特定負荷型の違いは、停電時に家のどこまで電気を使えるかにあります。家じゅうを普段どおり使いたい・オール電化で200V機器が欠かせない・災害の備えを最重視するなら全負荷型、コストを抑えつつ冷蔵庫や照明など要となる電気を確保できれば十分なら特定負荷型が向いています。普段の電気代削減効果はどちらも同じように得られるため、判断の軸は「停電時にどこまで求めるか」と「予算・対応機種」です。
とはいえ、主幹容量やEVの容量、希望メーカー・車種との相性まで含めて最適解を出すのは、専門的な確認が欠かせません。電池バンクでは、ご自宅の条件をヒアリングしたうえで負荷タイプと機種、補助金の組み合わせまでトータルでご提案し、補助金申請も無償で代行します。まずはお気軽に無料相談をご利用ください。
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