ペロブスカイト太陽電池とは?
仕組みと特徴を徹底解説
近年、再生可能エネルギーの需要が高まる中、太陽光発電はその中心的な役割を担っています。
しかし、現在主流のシリコン太陽電池には「製造コストが高い」「設置場所が限られる」「資源の確保が必要」などの課題があり、さらなる技術革新が求められています。
そこで注目されているのが、「ペロブスカイト太陽電池」 です。
これは、軽量でフレキシブル、かつ低コストで製造できる新しいタイプの太陽電池で、従来のシリコン太陽電池を超える可能性を秘めています。
特に、近年の研究では発電効率が飛躍的に向上し、実用化に向けた開発が加速しています。
本記事では、ペロブスカイト太陽電池の仕組みや特徴、メリット・デメリット、そして現在進行中の研究や今後の展望について詳しく解説します。
次世代のエネルギー技術として期待されるペロブスカイト太陽電池の魅力を、一緒に見ていきましょう!
ページ目次
注目の次世代技術!ペロブスカイト太陽電池とは?

ペロブスカイト構造とは、特定の結晶構造を持つ物質のことを指します。この名前は、19世紀のロシアの鉱物学者L.A. ペロフスキーにちなんで名付けられました。
ペロブスカイト構造は、結晶中の特定の原子の配置が光を効率的に吸収し、さらに電子を移動させやすくする特性を持っていて、太陽電池の材料として非常に適しています。
ペロブスカイト太陽電池は、この構造を活かして発電を行う新しいタイプの太陽電池です。
ペロブスカイト太陽電池の仕組み
ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト構造を持つ材料を発電層に使用しています。
仕組みとしては、シリコン太陽電池と似ていますが、いくつかの重要な違いがあります。
シリコン太陽電池では、厚みのあるシリコン基板を使用し、光がシリコン内の電子を移動させることで発電が行われます。
一方、ペロブスカイト太陽電池では、薄膜状のペロブスカイト層が光を吸収し、そのエネルギーによって電子を発生させます。
この違いにより、ペロブスカイト太陽電池は軽量で柔軟性があり、製造コストが低いというメリットがあります。
なぜペロブスカイト太陽電池が注目されるのか?
ペロブスカイト太陽電池は、近年急速に注目を集めている次世代の太陽電池です。その理由は、軽量で柔軟性があり、製造コストが低いという大きなメリットがあるからです。
特に、これまでのシリコンベースの太陽電池と比較して、より簡単で安価に製造できる可能性があるため、導入コストを抑えたい企業や家庭にとって非常に魅力的な選択肢となっています。
また、ペロブスカイト素材は高い変換効率を持ち、効率的に太陽光を電力に変換することができるため、エネルギー収益の面でも期待されています。
加えて、軽量で柔軟性があるため、さまざまな用途に応用が可能であり、例えば、曲面や移動体に取り付けることもできるという点で、従来の太陽電池にない新たな可能性を開いています。
最新のペロブスカイト太陽電池の発電効率
ペロブスカイト太陽電池は、近年、発電効率が急速に向上しています。これまでのシリコン太陽電池に匹敵するか、それを超える性能を持つことが期待されています。
例えば、2023年9月に東京工業大学が発表した研究では、ペロブスカイト/シリコンタンデム太陽電池の変換効率が30%に迫る成果が報告されています。
また、2024年2月には物質・材料研究機構(NIMS)が、太陽光に対して20%以上の光電変換効率を維持しながら、60℃の高温環境下で1000時間以上の連続発電に耐えるペロブスカイト太陽電池を開発したと報告しています。
これらの成果は、ペロブスカイト太陽電池が発電効率と耐久性の両面で大きな進展を遂げていることを示しています。
特に、ペロブスカイト/シリコンのタンデム構造は、シリコン単体の太陽電池に比べて効率を大幅に向上させる可能性があり、今後の市場投入に向けて期待が高まっています。
ペロブスカイト太陽電池 vs シリコン太陽電池の発電効率比較

ペロブスカイト太陽電池とシリコン太陽電池には、発電効率にいくつかの違いがあります。
シリコン太陽電池は、安定性や耐久性が高く、発電効率は一般的に約20%です。しかし、効率の向上には限界があります。
一方、ペロブスカイト太陽電池は急速に効率が向上しており、シリコンに近い性能を持ちつつあります。さらに、理論上の最大効率が高く、研究ではシリコンを超える可能性が指摘されています。
また、ペロブスカイト太陽電池は軽量で柔軟性があり、製造コストが低いため、発電効率がさらに向上すれば、将来的にはシリコン太陽電池を上回る性能を持つことが期待されています。
シリコン太陽電池との比較
項目 | ペロブスカイト太陽電池 | シリコン太陽電池 |
発電効率 | 25%程度、今後は向上に期待 | 20%程度、高いものでは30%超 |
製造コスト | 低コスト | 高コスト |
重量 | 軽量 | 重量 |
柔軟性 | 柔軟性あり | 硬い |
耐久性 | 低い |
高い |
環境負荷 | 鉛などの有害物質を含む可能性あり | 製造過程で環境負荷が高い |
設置場所 | 窓、壁、曲面など多様な場所に設置可能 | 屋根、地面など設置場所が限られる |
ペロブスカイト太陽電池の種類と特徴

ペロブスカイト太陽電池の特徴について学びましたが、次にその種類について詳しく見ていきましょう。
ペロブスカイト太陽電池は、その構造や材料によっていくつかの種類に分けられます。それぞれのタイプにはメリットと課題があり、用途に応じて適したものが選ばれます。
ここでは、代表的な3つの種類を紹介します。
① フィルム型ペロブスカイト太陽電池のメリットと課題
- 特徴:軽くて柔らかい!どこにでも貼れる新しい太陽電池
フィルム型ペロブスカイト太陽電池は、薄いフィルムの上にペロブスカイト層を形成した もので、シリコン太陽電池のように硬くなく、曲げたり折りたたんだりできる柔軟性を持っています。
この特性により、軽量で持ち運びが簡単で、屋根や壁、さらには衣服などに設置できる可能性があります。
また、製造が簡単で大量生産しやすいため、低コストで普及する可能性 も高いです。
- 課題:耐久性が低いのがネック
フィルム型は、その軽さと設置のしやすさが魅力的ですが、耐久性に関しては改善が必要です。
湿気や熱に弱く、長期間使用すると劣化しやすい という課題があります。また、発電効率もまだ向上の余地があり、さらなる研究が進められています。
② ガラス型ペロブスカイト太陽電池のメリットと課題
- 特徴:透明な太陽電池!窓ガラスと一体化も可能
ガラス型ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト層をガラス基板の上に形成したものです。
このタイプは、高い耐久性を誇り、屋外での長期間使用にも適しています。
さらに、透明なデザインが可能で、窓やビルの外壁と一体化することで、美観を損なわずに発電できます。
また、発電効率が比較的高く、フィルム型よりも効率的に電気を生成できます。
この特性を活かし、建物の窓ガラスやカーテンウォールに組み込むことで、建築と一体化した発電が実現します。
- 課題:重くて高価、設置場所が限られる
ガラス型ペロブスカイト太陽電池は、フィルム型に比べて重いため、設置場所に制約があります。
また、製造コストが高く、大量生産に向けたコストダウンが課題となっています。
③ タンデム型ペロブスカイト太陽電池のメリットと課題
- 特徴:シリコン+ペロブスカイトの最強コンビ!発電効率アップ!
タンデム型ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト層と別の種類の太陽電池(主にシリコン太陽電池)を組み合わせたものです。
この技術は、非常に高い発電効率を誇り、太陽光をより効率的に電気に変換します。
さらに、既存のシリコン太陽電池設備と組み合わせることが可能で、これまでの設備をそのまま活用できる点が大きな魅力です。
具体的には、シリコン太陽電池の上にペロブスカイト層を重ねることで、それぞれの特性を活かしながら発電効率を向上させることができます。
- 課題:コストと耐久性に課題あり
タンデム型は、最も発電効率が高い技術の一つですが、構造が複雑で製造コストが高くなる傾向があります。
また、ペロブスカイト層の耐久性が低いため、長期間使用するためには改良が必要です。
種類 | 特徴 | メリット | デメリット | 用途例 |
フィルム型 |
軽量 柔軟性 |
曲げられる、 多様な場所に設置可能 |
耐久性低い、 発電効率に改善の余地 |
窓、壁、 携帯機器 |
ガラス型 |
高耐久性 高透明度 |
屋外使用に適している、 窓と一体化可能 |
重量がある、 製造コスト高い |
窓、建材 |
タンデム型 | 高発電効率 | 既存設備を活用できる |
構造複雑、 製造コスト高い |
発電所、住宅 |
各種ペロブスカイト太陽電池の特徴比較
※フィルム型のペロブスカイト太陽電池は、軽量で曲げることができるため、移動型の発電にも使えます。しかし、長期使用における耐久性に課題があり、耐湿性や耐熱性の改善が求められています。
ペロブスカイト太陽電池の最新研究と今後の展望

ペロブスカイト太陽電池は、次世代の太陽電池として大きな期待を集めていますが、実用化に向けてはまだいくつかの課題を克服する必要があります。
ここでは、最新の研究動向と今後の展望について詳しく解説します。
耐久性と環境負荷の改善に向けた取り組み
ペロブスカイト太陽電池の最大の課題の一つが、耐久性の低さです。湿気や熱に弱く、劣化しやすいという性質があります。この課題を解決するため、様々な研究が行われています。
また、耐久性の高い新材料の探索も進められており、有機材料や無機材料を組み合わせることで、より安定したペロブスカイト層の形成が期待されています。
さらに、ペロブスカイト太陽電池には鉛などの有害物質が含まれる可能性があり、環境負荷への配慮が求められています。
鉛の代わりに無害な金属(例:スズやビスマス)を使用する研究が進められており、鉛フリーのペロブスカイト材料の実現に向けて努力が続けられています。
量産化技術とコスト削減
ペロブスカイト太陽電池の普及には、安定した品質での大量生産が不可欠です。現在、ロール・ツー・ロール印刷技術という、新しい製造方法が注目されています。
この技術では、フィルム型のペロブスカイト太陽電池を連続的に印刷することができ、大規模な生産とコスト削減が期待されています。
さらに、真空中で材料を蒸着させる、スパッタリング技術を用いた製造方法も開発されており、均一な薄膜を形成できるため、製品の品質向上が見込まれています。
これらの量産技術が確立されれば、ペロブスカイト太陽電池のコストは大幅に低下し、より多くの場所に導入できるようになります。
これにより、太陽光発電の普及が加速し、持続可能なエネルギー源としての位置づけが強化されるでしょう。
ペロブスカイト太陽電池の応用例

ペロブスカイト太陽電池は、その高い効率性と柔軟性から、さまざまな分野での活用が期待されています。
以下では、具体的な製品名や企業名を挙げて、どのように活用されているかを紹介します。
建物への応用
ペロブスカイト太陽電池は、建物の外壁や窓ガラスに組み込むことで、効率的な発電を実現します。
例えば、株式会社LIXILは、ペロブスカイト太陽電池を取り入れた窓ガラスの開発を進めており、これにより建物全体を発電所のように利用できる可能性があります。
また、株式会社カネカは、建材と一体化したペロブスカイト太陽電池を開発しており、これにより屋根だけでなく、建物の壁面でも発電を行うことが可能になります。
モバイル機器への応用
ペロブスカイト太陽電池は、モバイル機器のバッテリー寿命を延ばすために活用され始めています。
例えば、株式会社京セラは、スマートフォンにペロブスカイト太陽電池を搭載することで、充電の手間を軽減し、バッテリーの持ちを大幅に向上させる技術を検討しています。
また、株式会社富士通は、ウェアラブルデバイス、例えばスマートウォッチにペロブスカイト太陽電池を搭載し、使用者が頻繁に充電する手間を減らすことを目指しています。
輸送機器への応用
自動車やドローンなどの輸送機器にも、ペロブスカイト太陽電池の活用が進んでいます。
トヨタ自動車株式会社は、電気自動車のルーフやボディにペロブスカイト太陽電池を搭載することで、走行中にも充電が可能となり、より効率的なエネルギー利用を目指しています。
また、株式会社NTTドコモは、ドローンにペロブスカイト太陽電池を搭載し、飛行時間を延ばす技術の開発を進めています。
その他の応用
ペロブスカイト太陽電池は、農業や防災分野にも応用されています。東芝エネルギーシステムズ株式会社は、農業用ハウスにペロブスカイト太陽電池を設置することで、ハウス内で必要な電力を自給できるシステムを開発中です。
また、株式会社Jackery Japanは、ペロブスカイト太陽電池を搭載したポータブル電源の開発を進めており、災害時に電力供給を確保する手段として注目されています。
ペロブスカイト太陽電池が実現する未来の生活

あらゆる場所での発電
ペロブスカイト太陽電池は軽量で柔軟性があり、従来の太陽電池では設置が難しい場所にも取り付けることができます。
たとえば、建物の壁面や窓ガラスに組み込むことで、建物全体がエネルギーを自給自足する時代が近づいています。
また、自動車のボディに太陽電池を組み込むことで、走行中に太陽光を利用して燃料費を節約したり、電気自動車の航続距離を伸ばしたりすることができる可能性があります。
携帯電話やウェアラブル端末への搭載
薄くて軽量なペロブスカイト太陽電池は、携帯電話やウェアラブル端末に最適です。スマートフォンのバッテリー問題が解消され、長時間使用できるようになる可能性があります。
これにより、ユーザーは充電を気にせずに、より便利にデバイスを使用できるようになるでしょう。
また、ウェアラブルデバイスに搭載された太陽電池は、外出先でも充電ができるため、これまで以上に多機能なデバイスが登場することが期待されます。
これらの技術革新が進むことで、私たちの生活がより快適で効率的になると考えられます。
他の太陽電池との組み合わせ
ペロブスカイト太陽電池は、他の太陽電池と組み合わせることで、発電効率をさらに高めることができます。
一例として、シリコン太陽電池とペロブスカイト太陽電池を重ねた「タンデム型太陽電池」では、両者の特徴を活かし、高い発電効率を実現できます。
また、「ハイブリッド型太陽電池」という技術も注目されています。これは、異なる種類の太陽電池を組み合わせることで、それぞれの強みを活かし、さまざまな環境や条件でも安定して効率よく発電できるようにする技術です。
このような組み合わせによって、より効率的で持続可能なエネルギー供給が実現し、クリーンエネルギーの普及が加速することが期待されます。
スマートグリッドへの貢献
ペロブスカイト太陽電池は、スマートグリッドの構築にも重要な役割を果たすと考えられています。
普及すれば、各家庭や建物が小さな発電所となり、電力網への電力供給を行う分散型電源として機能します。
このように、太陽光発電の分散化が進むことで、エネルギーの供給がより安定し、効率的な管理が可能となるのです。
また、太陽光発電の供給量の変動を他の再生可能エネルギーや蓄電池と組み合わせて調整することで、需給バランスを保ち、電力の安定供給が可能になるでしょう。
ペロブスカイト太陽電池、持続可能な社会を支える新たな可能性

ペロブスカイト太陽電池は、発電効率の高さ、軽量性、柔軟性、低コストといった特長から、次世代の太陽電池として大きな可能性を秘めています。
まだいくつかの課題が残っているものの、世界中で研究開発が進められ、実用化に向けた道筋が着実に見えてきました。
ペロブスカイト太陽電池が普及すれば、エネルギー問題の解決や地域のエネルギー自給自足の実現、さらには地球温暖化対策にも貢献することが期待されます。
私たち一人ひとりが、持続可能な社会の実現に向けてできることを考え、行動していくことが大切です。ペロブスカイト太陽電池が拓く未来に注目し、共により良い社会を築いていきましょう。

記事監修:電池バンク編集部
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